みなさん、こんにちは。世田谷区経堂にある ふなき矯正歯科経堂クリニック 会長の舩木純三です。今日は私の著書「グッドスマイルとアンチエイジング Ⅰ -よい歯と歯ならびで健康長寿-」から抜粋してお届けする第三弾。
「よく噛む効用」について、4回に分けてお届けします。
だ液は魔法の薬
だ液は口の周りのいくつもの腺で作られます。作られる場所によってその性質と働きが異なります。大だ液腺は大きく分けて3つ、耳の前の耳下腺、顎の下にある顎下腺と舌下腺。そして、小だ液腺は歯肉を除く口の粘膜にあります。大だ液腺の中で、耳下腺はさらさらしただ液(しょう液性)で、顎下腺と舌下腺は、しょう液性とベタベタした粘液性のだ液が出てきます。
通常1日に出るだ液量は1~1.5リットルと多く、寝ている時や安静にしている時は、だ液の65%は顎下腺から出ています。一方、よく噛んだりした時には、耳下腺から出る割合が50%以上となり、このだ液には炭水化物を消化するアミラーゼが多く含まれています。
だ液が減少してくると、口が渇くドライマウスになります。この原因には発熱や下痢、多汗症、糖尿病、人工透析などによる体の水分減少があります。また、ストレスや更年期障害、加齢、そして、薬の副作用、特に降圧剤、抗ヒスタミン薬などが原因となることもあります。これらの原因のために、口が渇くと、口腔内では、まずむし歯や歯周炎、口臭などが起きてきます。
だ液は本来、口の中を湿らせ、汚れを洗い流す働きがあります。また、だ液には食物によって口の中がむし歯になりやすい酸性化を中和する緩衝作用があります。さらに、だ液中には殺菌作用のあるリゾチーム、ペルオキシターゼ、ラクトフェリンなどや抗菌作用のあるIgA、IgGなどが含まれていて、口の中を保護します(図3)。
【図3】だ液の主な働き

だ液が減ると全身に様々な不具合が
だ液が減ってくると、特に高齢者では、まず口の汚れが誤嚥性肺炎の原因になります(図4)。
【図4】だ液分泌量減少が引き起こす全身的問題

また、入れ歯が不安定になります。入れ歯はだ液を介して上あごや歯ぐきの粘膜に吸いつくことで安定します。口が渇くと吸いつきが悪くなり、外れやすくなります。そして、食事の飲み込みが難しくなります。食物はよく噛んだ後、だ液の働きで湿った粘着性のある団子状になって舌の上から喉に、そして、食道へと運ばれます。そのため、口が渇くと食物を団子状に作りにくくなるわけです。また、前述のだ液中のアミラーゼがご飯などの炭水化物を分解しやすくします。さらに、口が渇くと、口の中では、味覚異常が起きたり、舌が痛くなったり(舌痛症)、口の中に白いコケのようなガンジダ症が発生しやすくなります。このガンジダ症は時により、口腔がんの原因ともなる病気です。
一方、だ液が減ると逆流性食道炎が悪化します。その理由は、だ液中のEGF(上皮増殖因子)が減少し、食道粘膜の修復が難しくなったり、だ液の胃酸を洗い流す作用(Wash out)や重炭酸塩による酸に対する中和効果が少なくなるためと考えられます。
口の渇きが起こると、このように様々な不具合を引き起こすので、口腔乾燥症には早めの対処が大事です。
※ふなき矯正歯科経堂クリニック(世田谷区経堂所在)理事長・舩木純三著書「グッドスマイルとアンチエイジング①よい歯と歯ならびで健康長寿」より抜粋転載。