ひとことで不正咬合と言ってもその症状や原因は様々です。また、放っておくことで症状が悪化することもある為、しっかりとした検査と診断がとても大切になります。ここでは代表的な不正咬合の特徴をご紹介いたします。

不正咬合の種類と特徴

出っ歯(上顎前突)

出っ歯は、上顎前突(じょうがくぜんとつ)と呼ばれ、上顎、または上の前歯が前方に出ている状態です。 出っ歯だと口元が閉じにくいため、見た目も良くなく怪我の原因にもなります。また口呼吸によって口の中に花粉やハウスダストが入り、アレルギーを起こしやすいなどのデメリットがあります。さらに口角が上がりにくい傾向があり、笑った時に上の歯肉が見える「ガミースマイル」になりやすいのも特徴です。

受け口(下顎前突、しゃくれ)

受け口とは、下の顎または下の前歯が前方に出ている状態で、かみ合わせが上下反対になっており専門的には反対咬合(はんたいこうごう)と呼ばれます。受け口は前歯で物を噛み切れなかったり、「サ行」の発音が悪くなることもあります。審美的に見ると口角があがらず、下唇や下顎付近の緊張が強く笑顔が不自然な感じを与えます。また下の前歯や歯肉が見えることで若々しさが損なわれがちです。骨格に問題がなければ通常の矯正治療で改善できますが、顎の上下のズレが大きい場合は矯正治療に加えて「外科的」手術を受けて治療します。

叢生(八重歯・乱ぐい歯)

八重歯は犬歯が飛び出ている状態をさし、乱ぐい歯は歯並びがデコボコの状態をさします。専門的には叢生(そうせい)と呼ばれます。両方の症状が一緒に出ることが多いのも特徴です。 食べ物が詰まりやすく歯磨きもしにくいため、むし歯や歯周病の原因にもつながります。また、唇が八重歯やデコボコした歯に引っかかり、引きつれたような不自然な笑顔になりがちです。矯正治療では歯と顎の大きさが異なっている場合、成長の終了していない子どもであれば、顎を拡大することもあります。またデコボコが大きい成人の場合は、歯を抜くこともあります。

すきっ歯

歯と歯の間に隙間がある症状を「すきっ歯」といいます。 前歯2本だけに隙間が開いている場合や、歯全体が開いている場合などいろいろあります。歯と歯の間に隙間があると、見た目の悪さだけでなく、喋る時に歯の間から空気が漏れ、発音が不明瞭(特にサ行)になってしまいます。
上唇の内側から歯肉にわたるヒモ状の粘膜ヒダ(上唇小帯)の異常が原因の場合や、上あごの骨の中にある余分な歯(正中過剰歯)が原因の場合もあります。また舌癖が原因の場合は、舌癖のトレーニングも併用することになります。

開咬(オープンバイト)

前歯が開いている歯並びは、専門的には開咬(かいこう)と呼ばれます。 奥歯はしっかりと咬んでいるのに、前歯が咬み合わない状態です。 舌を前に出す癖のある人に多く見られます。 舌のトレーニングと矯正治療で美しく改善します。叢生や上顎前突が伴う場合は、必要に応じて小臼歯(前から4〜5本目の歯)などを抜いてから、矯正治療で上下の歯を噛み合わせます。近年では歯の植わっている骨に小さなチタン製の安全なミニスクリュー(インプラントの一種)を入れて治療を行うこともあります。

過蓋咬合(ディープバイト)

上の歯が下の歯に被さるように深く噛み込む状態を過蓋咬合(かがいこうごう)と呼びます。
見た目の問題はもちろんのこと、下の歯茎にダメージを与えてしまったり、咀嚼が上手くできず栄養吸収の問題などにもつながってきます。また、顎関節症や口呼吸の原因にもなります。

過剰歯(歯が多い)

過剰歯とは、本来なくても良い余分な歯です。過剰歯は自然と生えてくる場合もありますが、顎の骨の中に一生埋まったまま生えてこない場合もあります。過剰歯の弊害は永久歯の生え方や他の永久歯の歯根を吸収する悪影響があります。そのような場合には時期をみて抜歯する事になります。影響が出てしまった場合は、矯正治療が必ず必要となります。

欠損(歯が少ない)

矯正治療で欠損歯の隙間を閉じることが可能です。 生まれつき歯の数が足りない方や,むし歯や外傷などにより歯を失ってしまった場合、歯科矯正治療を用いずに治そうとすると、インプラント,ブリッジ,入れ歯などになります。しかし、これらの人工物は何年か経って再製作が必要です。一方、矯正治療で欠損歯の隙間を閉じると、手入れ次第で一生使用することができます。

顎変形症(顎のゆがみ)

上顎、もしくは下顎が、上下・左右・前後に変形している状態を「顎変形症」といいます。 このような状態だと、ものがしっかり噛めないだけでなく、発音が不明瞭、顎の関節に痛みがあるといった障害が出てきます。 また、顎の形がコンプレックスとなって積極的になれないなど、人知れず悩みを抱える場合も多くあります。

子ども特有の不正咬合

埋伏歯(大人の歯が生えてこない)

「反対側の同じ位置の歯は生えかわったのに、まだ生えかわらない歯があるみたい。」
「歯科医院でレントゲンを撮ったときに、埋まっている歯があると指摘された。」
大人の歯への交代をする時期が来ても歯が生えてこない場合、埋伏歯(骨の中にもぐっている大人の歯)を牽引する矯正治療が必要となります。 埋伏している歯を放置しておくと、骨の中で、隣の歯の根とぶつかって、吸収してしまうことがあります。そのような時は、埋伏歯を骨の中からけん引し、ならべます。

過剰歯

「片方の歯は生えているのに、1年経っても、もう一方の歯が生えてこない」
左右の同じ種類の歯は、通常同時期に萌出してきますが、余分な歯(過剰歯)が骨の中にあると、生えてこられません。生えてきた後も歯並びが悪く、矯正が必要なことがあります。

先天欠損

「大人の歯への生えかわりは進んでいるのに、すきっ歯のままは、どうしてかしら」
レントゲンを撮ってみると、永久歯の歯(し)胚(はい)がありません。すきっ歯のままでは、見た目にも美しくなく、生えかわらずに残っている乳歯も長持ちしませんので、矯正治療でよく噛める咬合にします。