歯科情報・知識

よく噛む効用①噛むこと

みなさん、こんにちは。世田谷区経堂にある ふなき矯正歯科経堂クリニック 会長の舩木純三です。今日は私の著書「グッドスマイルとアンチエイジング Ⅰ -よい歯と歯ならびで健康長寿-」から抜粋してお届けする第三弾。

「よく噛む効用」について、4回に分けてお届けします。

 

矯正治療でよく噛めるようになると

当院で矯正治療を終了した患者さんの治療前と後での体調の変化を調べてみると、矯正治療後には図1(ふなき矯正歯科調べ)のように頭痛、腰痛、肩こりの改善やあごの関節の音や痛みが軽減していました。

【図1】矯正治療後の体調の変化

   

   

その理由の詳細はまだ十分には科学的に証明されていませんが、よく噛めることで体の血流が改善されたばかりか、体の左右のバランスがとれ、かつ、だ液等の作用で免疫力が上がったためではないかと考えられます。

この他に、よく噛む効用として、あごを動かす筋肉(咀嚼筋)や顎骨や周辺の骨、そして歯を支えている歯根膜などが丈夫になります。ただし、左右の歯でバランスよく噛まずに右側だけで噛んでいると右の咀嚼筋などが発達し、下顎が曲がって顔の左右非対称が起きることがあります。体の健康のためには、食事は左右の歯でバランスよく噛むことが大事です。

また、咀嚼筋などは下顎骨や頬骨、そして耳の上部にある側頭骨にもつながっています。このため噛まない人はこれらの周辺の骨も弱くなって発音も悪くなります。また、あごの骨と歯は歯根膜繊維といわれるゴムのようなコラーゲン繊維で着いています。噛まない人はこの繊維が弱くなり、歯を支える力も弱くなるわけです。

噛んで食の味わいを楽しむ習慣をつけましょう

いま、食事による体と心の発育を促す「食育」が注目されています。学校教育でも取り入れられていますが、「食育」とは、ただ単なる栄養価の高い食事をすることだけでなく、家族とともによく噛んで食の味わいや楽しさをしっかり楽しみ、心と体を健康にすることを学んでもらうわけです。「食育」では、「噛む習慣」をつけることが大事な課題の1つになっています。

噛む習慣をつける具体的な方法をいくつかお話します。まず第1は、食べるときに口いっぱいに食事を入れないことです。1品を適量だけ口に運び、箸を置きます。そして、30回ゆっくり噛むようにします。2番めは、よく噛んで食べる時、どんな噛みごたえ(テクスチャ―)や歯ざわりで、どんな匂いがして、どんな味がするか、言葉にしてみることです。そして、後でその言葉をメモに書き留めてみましょう。第3に食事中は水分を大量にとらないことです。できれば、コップ1杯の白湯をすする程度にします。味噌汁やみずならまだしも、多量の甘味の多い清涼飲料水やジュースをとると糖分が多くなるばかりか、必ず食事を噛まずに胃の中に流し込むようになります。白湯は高齢者の方でむせがなければ、消化を助け、乾燥した硬い食物でも軟らかくなり飲み込みやすくします。

1974年に「ピュイゼ・メソッド」と呼ばれる食育の基本的な考え方を提唱したフランス味覚研究所所長のジャック・ピュイゼ教授は、味覚を育むには幼いころから五感で「味わう」体験を積むことが大事だと指摘しています。ピュイゼ教授の食育メソッド「子どもの味覚を育てる」は日本語にも翻訳されて広く読まれています(図2)。この本によれば、食の先進国フランスやイタリアでは小学校から味覚教育があるそうです。噛んで食べて食の味わいを言葉にすることで、賞を楽しみ、味を覚えていきます。その微妙な味を学習していけば、肥満の原因であるジャンクフードや健康に良くない添加物の多い加工食品を過食しないようになるということです。

2013年12月4日に「和食」が世界無形遺産に登録されました。これをきっかけに、これからの若者には和食をよく噛んで食べて、自分の味覚を育て、食事をもっと楽しんでもらいたいと思います。

【図2】「子どもの味覚を育てる」(紀伊國屋書店)

 

※ふなき矯正歯科経堂クリニック(世田谷区経堂所在)理事長・舩木純三著書「グッドスマイルとアンチエイジング①よい歯と歯ならびで健康長寿」より抜粋転載。

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